2024年7月企画【わたしと父がいた時間】
こんにちは、夏目です。
「徒歩5分の映画館」へようこそ!
当館は「映画館をより身近に。動画配信サービスをより快適に」をコンセプトにした架空の映画館です。観たい映画があるから、ちょっと先が楽しみになる。そんなサイトを目指していきますので、良かったらお立ち寄りくださいね。
こちらの記事で「徒歩5分の映画館」詳しい紹介をしています!
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7月の企画上映は「わたしと父がいた時間」と題して若い父親と幼い娘の物語を3作品集めました。タイトルはこちら!
- 「SCRAPPER スクラッパー」
- 「aftersun アフターサン」
- 「メイジ―の瞳」
「SCRAPPER スクラッパー」は現在上映中の作品、他2本は配信で視聴が可能な作品です。
あなたの想い出の中にいる”昔の父”はどんな姿ですか?きっと、昭和・平成・令和で父親の在り方は(もちろん母親もね!)変化し続けているんじゃないかしら?
私の父は悪気なく「24時間戦えますか?」と問われた昭和のモーレツサラリーマンだったので、平日は父と顔を合わせることはほとんどなく、休日もゴルフやプロ野球の中継を見ながらテレビの前で寝てばかりな印象でした。
あの頃、気まぐれに私と姉をドライブに連れて行ってくれたのは父自身の気分転換のためだったのか、家族サービスだったのか。
あの日の様にカーステレオから流れるカーペンターズをBGMに、もし今のわたしが若い父とドライブできるのなら、当時の父が抱えていた仕事や子育て、家族の悩みに共感し、耳を傾けることが出来るのでしょうか。
ということで、今回は若くして父親になった男性と幼い娘が登場する物語を集めたのですが、ジャン・レノとナタリー・ポートマンが絶妙なコンビを演じた「レオン」の様に、男性と少女という組み合わせはそれだけで物語の予感がたっぷりですよね。
どの作品も父親の細かな事情は省略され、観客にゆだねられる部分も多いので戸惑う方もいるかもしれません。でも大人になった私たちには父親が抱く”大人の事情”を想像することも出来ますよね。そんな「あるべき姿」に苦悩する若き父親の姿に、ぐっとくるシーンもあるのではないかと思います。
昔の父親を思い出しながら。現在進行形で「親」を頑張っている方は”今ここ”や、少し前の事を思い出しながら。おおかた「親」は卒業したかな、という方は幼かった子供との時間を思い出しながら楽しめるラインナップになっていると思います。
では早速1つずつ作品を紹介していきますね。
【SCRAPPER スクラッパー】
まず1本目は7月5日から公開スタートしている「SCRAPPER スクラッパー」。
母を失って孤独に生きる少女の前に現れたのは12年間音信不通だった父。お互いに「父」と「娘」がどんな存在なのか分からない2人のぎこちない出会いを描いています。
主演の娘ジョージ―を演じたのは本作がスクリーンデビューとなるローラ・キャンベル。
そして父親役は「ザリガニの鳴くところ」「逆転のトライアングル」「アイアンクロー」など、最近よく映画で観るなぁと思って個人的にも注目していたハリス・ディキンソンが演じています。監督は本作が長編デビューのシャーロット・リーガン。
今回選んだ3作品すべてに言えるのですが、やっぱり素晴らしいのは娘役を演じた女の子たちなんです!「SCRAPPER スクラッパー」でジョージをローラ・キャンベルも魅力的だった~。
お母さんを亡くした淋しさと不安と孤独に押しつぶされないようにジョージが採用しているのは怒りと大人のフリなのですが、現実問題に直面すると自分はどうやっても「こども」なんですよね。
未成年が一人で暮らすだなんてお金も安全もない状況なので、生きるために犯罪に手を染めるしかない子供たちは沢山いると思うのですが、シャーロット・リーガン監督はそうした社会問題ではなく、自分に殻を作って毎日奮闘するジョージと、年齢は大人なんだけど「おとな」になり切れなくてジョージの前から逃げた過去を持つ父ジェイソンとの人間関係にフォーカスしています。
ジョージが大人っぽく振舞う切なさ、ジェイソンのダメっぷり、そして2人のぎこちなさが楽しめる一作です。
12年間離れていたのに、2人が並んで歩くと父と娘に見えてしまう空気感、なんだかそっくりな二人だなと感じられるあり方は映画が終わった後のストーリーも感じさせられて楽しい1本になると思います。舞台になっているカラフルな街と監督の遊び心を感じる「SCRAPPER スクラッパー」は夏にぴったりの作品でした!
上映規模が大きくはない作品なので、映画館では観れない方もいるかもしれませんが、、、(紹介しておいてごめんなさい)お近くの映画館で上映されるならば、ぜひ劇場でお楽しみくださいね!
作品情報
- 2023年制作/84分/PG12/イギリス
- 原作:Scrapper
- 劇場公開日:2024年7月5日
- 監督:シャーロット・リーガン
- 出演:ローラ・キャンベル
- ハリス・ディキンソン
【aftersun アフターサン】
ここからは配信で視聴可能な作品の紹介です!
2本目は、普段は離れて暮らす31歳の父カラムと11歳の娘ソフィーがトルコのひなびたリゾートで過ごす夏休みを描いた作品「aftersun アフターサン」
この作品は2023年5月に公開された映画なので、記憶に新しいという事もありますが「SCRAPPER スクラッパー」と合わせてみたら絶対楽しめる!とすぐに思いついた作品です。
また舞台となっているトルコのひなびたリゾートが良い感じなんですよ。プールやゲームセンターが併設されたホテルで過ごすのは、普段は離れて暮らす31歳の父カラムと11歳の娘ソフィー。
「SCRAPPER スクラッパー」のジョージが12歳、「aftersun アフターサン」のソフィーが11歳の設定なので、この二人の様子を比べるのも面白いんです。
私には11歳の娘がいるので、この年頃の女の子の感じが凄く分かるんですよね。もう子ども扱いは嫌。でも大人扱いばかりされるのもなんだか悔しい気分。モヤモヤモヤモヤ、、、、。小学校5、6年生って自分を中途半端に感じる時期ではないかしら。
ほら、中学生になちゃえば「思春期」と名付けられますしね。
「aftersun アフターサン」では20年しか離れていないこの父娘が絶妙です。31歳なんて、まだ社会人としては「若手」に分類されませんか?後輩はいるけどまだ部下は任されていなくて、ようやく「中堅」が見えてきたかな、、という頃ですよね。
思い返してみると幼い時って、大人を「役割」でしか見ることができませんでした。周りにいる大人は「父親」か「母親」、あとは大体「先生」だったので、その役割を演じている以外の時間と空間にいる彼らを想像することが出来なかったのだと思います。
でも成長と共に少しづつ大人たち「個人」の事情も分かってくる。「なーんだ、父も母も先生も、この世界に生きるひとりの普通の人間なのか」という気づきはガッカリした気分を伴いましたが、私を自由にもしてくれました。ソフィにとっての父カラムの存在もひと夏のリゾートで少しずつ変化していく、、、その”揺らぎ”にハラハラしつつも二人の絆を感じることができる1本です。
この映画の大きな枠組みは「父とリゾートで過ごしたあの夏から20年後、当時の父カラムと同じ年齢になった娘のソフィが、その時にビデオで撮影した懐かしい映像を振り返りながら”大好きだった父”との記憶をよみがえらてゆく。」というストーリーなので「太陽がまぶしくでキラキラ輝く夏!」という雰囲気ではなくどこか影がある作品なのですが、その影に引き寄せられる人も多いはず。11歳のソフィーには理解できなかった故に映画の中では省略されているカラムの苦悩を是非感じてみてくださいね。
作品情報
- 2022年製作/101分/G/アメリカ
- 原題:Aftersun
- 劇場公開日:2023年5月26日
- 配信情報:2024年7月現在
Amazonプライム
U-NEXTで配信中 - 監督:シャーロット・ウェルズ
- 出演:ポール・メスカル
- フランキー・コリオ
【メイジ―の瞳】
最後は2014年1月に公開された「メイジ―の瞳」です。両親の身勝手な行動に振り回される6歳のメイジ―に寄り添いたくなる(かけ寄って抱きしめたくなる!)1本です。
こちら10年前に公開された作品ですが、今回選んだ3本の作品の中では一番ストーリーの起承転結がはっきりとしているので、まずはこの1本から観るのもおススメです。
メイジ―のお母さんはロック歌手。お父さんは美術商という面白い職業を選んだパートナーなんですよ。上手くいけばちょっと変わった楽しい家庭になりそうですが、ケンカが絶えない2人は結局離婚することになってしまいます。
話し合いの結果、娘のメイジ―は10日ずつ両親の家を行ったり来たりする事に決まりますが、6歳のメイジ―にとって生活空間を変えるのって大変です。
それは両親にとっても同じで、結局父親は元ベビーシッターで新たに妻として迎えたのマーゴに、母親は新しい恋人のリンカーンにメイジ―の世話を任せっきりにしていくんですよね。
こう書くと悲惨な状況のメイジ―ですが、元々ベビーシッターとして多くの時間を過ごしてきたマーゴとは大の仲良しだし、”メイジ―のために”次の父親に選ばれたアレクサンダー・スカルスガルド演じるリンカーンも愛情ある人物なんです。
とはいえ、子供と接してこなかったリンカーンには急に6歳の女の子のお世話をするなんて、どうしたらいいのか分からない。そんな戸惑いの中で、彼はメイジ―を小さな子供として扱うのではなく、一人の人間として尊重してくれます。
そんなリンカーンの態度を見て、メイジ―が彼を受け入れるシーンはとっても可愛くて大好きです。この時からメイジ―にとってリンカーンは「父親」ではなく、自分を姫にしてくれるカッコいい王子様になったのだろうなぁ。
この作品ではメイジ―演じるオナタ・アプリールちゃんが健気で可愛いんです!もー、メイジ―を悲しませないで~!!とかけ寄りたく人も多いはず。
ハチャメチャな両親とメイジ―、それぞれの新しいパートナー。葛藤を抱えた大人たちに振り回され続けるメイジ―を見ていると「親」や「家族」「愛」について考えてみたくなると思いますよ!
こちらも是非配信でお楽しみください。
作品情報
- 2012年製作/99分/アメリカ
- 原題:What Maisie Knew
- 配給:ギャガ
- 劇場公開日:2014年1月31日
- 配信情報:2024年7月現在
U-NEXTで視聴可能 - 監督:スコット・マクギー
デビッド・シーゲル - 出演:オナタ・アプリール
- アレクサンダー・スカルスガルド
いかがだったでしょうか?
2024年7月の企画「わたしと父のいた時間」は以上の3本でした。実は私の娘たちは長女が「SCRAPPER スクラッパー」のジョージ―、「aftersun アフターサン」のソフィーと同じ11歳で次女が「メイジ―の瞳」のメイジ―と同じ6歳なんです。たまたま登場人物と同じ年代の娘たちを子育て中なのですが、3作品に登場する娘たちの反応や態度に「分かるな~」と思う事も多くて、そういった意味でも楽しめました。
この「徒歩5分の映画館」には私がマスターを務めるカフェの併設も構想中です。そこでは映画鑑賞後にランチやおやつを食べながら観てきた映画の感想を話したり、気になる作品について情報交換したり。ゆるりとした時間を楽しめる場所にしたいと思っています。
まだまだ建設中の「徒歩5分の映画館」ですが、また次回の企画でお会いしましょう!
ではではー♪
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